Woman Smile Report 女性たちの暮らしと意識をレポートします

「ウーマノベーション」日本を変える、5つの女子力。 02

「ありのままの力」が日本を変える。

2014/12/28

 

ありのままの力が日本を変える。
大ヒット映画『アナと雪の女王』で
大人女子の共感を得た「ありのまま」=
女性たちの素直な感性や生活実感が、ヒット商品を創るヒントに。

 

2014年、世界中でメガヒットした映画『アナと雪の女王』。この主題歌も人気の一翼を担ったようです。歌詞の中に出てくる「ありのまま」という言葉。「ありのままで自分を信じる」ことのメッセージに、多くの女性たちが共感を覚えました。息苦しく、ストレスもたまりがちな、いまの世の中。働く女性にとっては、男性社会の中でがまんすることも多く、自分らしさや素直な意見が出せない場面もあるようです。そこで「そのままで大丈夫」「素直になればいい」と言ってもらいたい気持ちが、「ありのまま」という言葉に惹きつけられたのでしょう。このような世の中でも、すでに「ありのまま」の力を発揮している女性もたくさんいます。女性は日常の不便や不満をキャッチしやすく、それを商品開発に活かしやすいのも事実です。そんな女性ならではの新しい観点や生活実感からヒット商品を生み出して、企業の発展に貢献している事例をご紹介します。

 


 

 

“ありのままに感じる力”から、ヒット作が生まれる。

エース株式会社 HaNT開発チーム

左から デザイナー・久世温子さん(31)、MD・小野田慧恵子さん(29)、MD・城井まゆらさん(31)、PR・森川泉さん(30)、専門店MD・山口彩乃さん(26)、グラフィック・加藤千歳さん(26)

 

 


 

男子禁制。若手女性社員6名が開発した「女子旅のためのスーツケース“HaNT(ハント)”マインスーツケース」が2014年4月の発売以来、売り上げを伸ばしています。女性だけのチーム環境づくりからスタートしたヒット商品の裏側をのぞいてみましょう。

 

「自分たちが欲しいスーツケースを作ってみなさい」!?

 

カルチャーやファッションの先端をゆく原宿神宮前。エース株式会社のきれいなオフィスタワで“HaNT”は誕生。「ある時、常務から“自分たちが欲しいスーツケースをつくりなさい”という指令が下りました。それを受けてマーチャンダイザーやデザイン、営業、広報など各部署から、同世代でいっしょに切磋琢磨できそうなメンバーを集めたんです」と入社8年目の城井まゆらさん。お姉さん的ポジションでメンバーを導いています。さて、チームはできたが何から始める?その取っ掛かりが極めて女性らしい。「まず、お互いのキャラや感性を知るために“好きなもの発表会”をしました。絵本やオブジェ、小物やインテリアの写真集、漫画などを持ち寄りました。そこで判明したのが全員、ピンクやリボンなどのいわゆるかわいい系テイストを好んでないこと。カラー展開からピンクは外そうと決まりました(笑)」。6人6色の「好き」「なんかイヤ」など正直な感性をシェアする中で、欲しい商品の輪郭が見えてきます。入社2年目のグラフィックデザイナー加藤千歳さんが、「Have a Nice Time」のメッセージを込めたブランド名とロゴを提案すると、会議のテンションはいっきにアップ!“HaNT”はブランド名であると同時に、6名を結束するチームの旗印となったのです。空港で女性の行動をリサーチしたり、実際の持ちものを詰めてみたり、スーツケースで困った経験をアンケートしたり。考えるより、動く。悩むより、どんどん見える化する。「それ、本当にほしい?」と互いに問いかけながら、ランチミーティングを繰り返していきました。ごく自然に意見を言い合える空気。ただし、「ただの仲良しグループだと思われるのはイヤ。ものづくりにも影響が出るので互いのフィールドを尊敬し、ほどよい距離感を保つことを心がけてきました」。コミュニケーションをとるための「飲み会」なんて必要なし。たまにリサーチの後、カフェでケーキを食べる程度でお腹いっぱい、と笑います。

 


 

2009年、原宿へ移転。女性の力でファッション性をアップ。

 

創業70年を超える老舗バッグメーカー・エースは2009年、浅草駒形からファッションの最前線である原宿神宮前へ本社移転。バッグはファッションアイテムのひとつと捉えなおし、男性中心だった商品開発にも感度の高い女性社員を増やしていきました。その延長で、2013年エースでも初めての試みとなる女性だけの商品開発チームを結成。彼女らに部署の垣根を越えたポジションと時間と権限を与えることで、エースのコアターゲットではなかった20~30代の女性が共感する商品を創りだすことに成功したのです。ただ、彼女らの「ありのままの力」を引き出し、のびのびと発言できる環境で仕事をしてもらうには会社側の理解や努力も必須。「開発途中で迷うこともありました。だけど、常務は失敗してもいいから自分が欲しいものを信じろ!と一貫した態度。おかげで安心して打ち込むことができました」と城井さんは振り返ります。ちなみにチーム“HaNT”の初期メンバーは商品が売り場に並ぶのを見届けたのち、解散。AKB48のようにリーダー格の2人が抜け、現在は、新メンバー2名が加わり、新プロジェクトが始まっています。「どんどん循環させ、女性に経験を積んでもらうことが大事」。チャレンジを恐れない企業姿勢が、女性のありのままの良さを伸ばし、躍進させてきたのでしょう。


 

<働く女子に贈る明日へのヒント>


売れるものを作るのか、好きなものを作るのか。これは商品開発のうえで、ぶち当たる問題。デザイナー久世さんは「自分が愛情を込めたものが、必ずしも会社や消費者の喜ぶものになるとは限りません。そのなで、役割の違う6人の女性で正直な意見を交わしながら試行錯誤し“HaNT”が誕生。チームみんなの愛情が営業やMDや製造スタッフにも伝播し、消費者まで届いたんだと思います」。自己満足から、みんなの満足へ。女性の成長は、そのまま企業の成長となりそうです。

立場や年齢の違いを超えて、女性の本音が結束したパワー。

らでぃっしゅぼーや株式会社

川本あかねさん(50) 商品部食品課マーチャンダイザー

盛定桂子さん(43) 品質保証部 CS推進課長

 

 


 

らでぃっしゅぼーや初の試みとなる、社内横断でメンバーを集めた女性だけの商品企画プロジェクトが「女子Rabo」。女性が日々感じている暮らしの本音を共有しながら、各自の専門性を発揮して一致団結。明るいパワーに満ちたその姿勢が社内に新風を吹き込みます。

 

一通の投書がきっかけで、部署も世代も異なるメンバーが集結。

 

らでぃっしゅぼーやには、サービス向上のために社員の意見を募る「気づきの声」という制度があります。そこに寄せられた「女性が求める商品を、女性チームで開発するプロジェクトがあってもいいのでは」という一通の投書が、「女子Rabo」誕生のきっかけでした。2014年4月に第1弾商品となるお弁当用冷凍惣菜を、その後、顔ぶれも新たに結成したチームから、時短調理に役立つ合わせ調味料「アレンジ三昧」シリーズをリリース。「“アレンジ三昧”の開発に集まったのは所属部署も世代もバラバラな7人。独身もいれば既婚者も子育て中の人もいて、それぞれの任務をこなしながら週1回のミーティングを重ねて、まるで部活動のようでした」と話すのは、品質保証部の盛定桂子さん。「一番苦労したのはやはり味です。メンバー内でも味の嗜好が分かれる中で、らでぃっしゅぼーやとしての味にどう照準を合わせるか、味と保存性のバランスも考えながら試行錯誤を繰り返しました」と、商品部の川本あかねさんも約半年の歩みを振り返ります。
 何度も試作と味見をしてはディスカッション。自由な意見が飛び交う和やかな雰囲気の中で本音を共有し、とことん女性目線に立ってものづくりを進めてきた「女子Rabo」。たとえばチャプチェの素が焼うどんや煮物にもアレンジできるなど、ひとつの合わせ調味料を多彩に使い回すレシピ
提案に力を入れました。ボトル調味料のように、冷蔵庫の奥で忘れられて変質してしまうことがないよう使い切りパックにしたのも、女性の生活実感に根差しています。またメンバーは料理が得意な人ばかりではありません。でもそのおかげで料理が苦手な人がつまずくポイントが分かり、使いやすさのブラッシュアップにつながったとか。

 


 

長く働ける理由は、自社への愛着。女性の本音で会社に横串をさして。

 

 現在、らでぃっしゅぼーやの社員男女比は約半々。結婚・出産を経ながら勤務を続ける女性が多いのも特長です。「制度のおかげもさることながら、らでぃっしゅの商品が好きだから、理念が好きだから、という思いで長く働き続ける女性が多いですね」と川本さん。発想がビジネス寄りな男性は、品揃えの充実や製造効率に目が向きがち。でも女性は「自分が本当にほしいもの」を開発しようという姿勢が強く、味わいから使い勝手、商品特性を伝えるコミュニケーションのあり方に至るまで、「消費者の手元に届いた先のこと」をきめ細かく想像し配慮することができる、というのが2人の分析です。「上層部の男性陣に商品や販促プランをプレゼンした時、“そこまできめ細かく考えている心遣いは、きっと消費者にも響くだろう”と言われたのは嬉しかったですね」と盛定さん。ただでさえ便利なモノがあふれている世の中で、選ばれる商品になるためには、消費者である女性に「こんなモノがほしかった」と思わせるリアリティが不可欠といえるでしょう。また宅配サービス会社として組織が拡大する中で直面するのが、「部署をまたいで横串をさすような活動が生まれにくくなる」という課題。その点でも、商品開発からコールセンター、カタログ制作など、さまざまな部署の専門性を活かしてチームの成果につなげた「女子Rabo」は、社内に新風を吹き込みました。社員であると同時にひとりの生活者として、立場の違いを超えてありのままの本音でつながる。そんなものづくりにヒットの芽が潜んでいそうです。

 


 

<働く女子に贈る明日へのヒント>

女性チームでプロジェクトを進めるコツは「人数をある程度絞ることと、話が本題から逸れないように舵取りをする進行役を決めること」と話す川本さんと盛定さん。本音トークから自由な発想を広げる一方で、それをいかに会社としてのゴールにうまく集約していくかが手腕の見せどころ。部署ごとの利害が対立することなくひとつの目的に向かってお互いの強みを活かせる、そんな信頼関係を築くことが鍵になりそうです。

女性の感性を貫き、仲間と力を合わせて糀を生活に身近なものへ。

マルコメ株式会社 松井久仁子さん(30)マーケティング本部広報部PR課 

 

 


 

「味噌や糀の研究がしたい」。それがマルコメへの入社志望動機だったという松井久仁子さん。志望叶わずマーケティングチーム配属となって2年目のある日、「女性だけで商品開発をしてみないか」と声がかかります。「ちょうど開発室で白味噌の試作をする過程で、糀の非常に甘いペーストが生まれまして、これは面白いというので、かねてより糀を商品化したいと言っていた私たちに白羽の矢が立ったんです」。2010年に2人でスタートし、徐々にメンバーを加えて5人体制に。「社内ではほとんど期待されていない弱小プロジェクト」と松井さんは当時を思い出して笑います。「でも、男性の意見を取り入れると中途半端になるから、女性の感性で作れ、男性の声は聞かなくていい、と当時の上司が言ってくれたことは大きかったですね」。それまで男性主体でものごとが進んできた社内に、新しい風が吹き始めました。当時はまだ本格的な糀ブームが訪れる前のこと。どうすれば女性たちに糀を身近に感じてもらえるだろう。松井さんたちは考えました。実際に食べてみると、パンに塗ってもヨーグルトに混ぜてもおいしい。「じゃあジャムとして売ろう。そうすればきっと女性たちが自由に用途を広げてくれる」。第1弾商品「糀ジャム」はこうして誕生しました。

 


 

女性が誰かに話したくなる商品を。その狙いが当たり、大ヒット

 

「テーブルに置いてあってもお洒落で、女性が誰かに話したくなるもの」というコンセプトで、ネーミングや製品デザインを決定。商品発表が間近に迫る中で「このデザインではマルコメ製品だと分からない」と、社長からストップがかかるというピンチもありました。しかしメンバーたちは「これは糀のよさを女性にわかってもらいたくて作ったもの。社名ではなくプラス糀というブランドで勝負したいんです」と訴え、社長を説き伏せます。そうやって2012年春に世に出た「糀ジャム」は大ヒット。その年のうちに「プラス糀」ブランドは30種近い商品をラインナップし、糀の認知拡大に大きく貢献することになりました。アイテムが増える中でも、松井さんたちはありのままの生活実感に立脚したものづくりを大切に守り続けました。「自宅でもよく糀を使ったレシピを試作していました。主人が糀の風味が苦手な人なので、これはいい実験台だと(笑)。糀を使っていることは黙って食べさせてみて、“おいしい”と言ってもらえたら、よし!みたいな」。今や「プラス糀」ブランドは、5人の手を離れて会社規模の事業に育ち、「社名ではなくブランドで売る」という手法にもいっそう磨きがかかっています。「夢は、どこの家庭にも糀商品がひとつはある、という環境を叶えること。糀や発酵食品の持つ可能性を、もっと広げていきたいですね」。松井さんはそう言ってにっこり笑いました。

 


 

<松井さんの「ありのままの力」の鍵>

「女性だけの商品企画は前例がないだけに、本当に売れるのだろうかという不安はつきまといました。でも、それまで会社では言えなかった女子の本音を共有できるメンバーがいたから、頑張れたと思います」と松井さん。「男性の意見は聞かなくていい」という上司の判断も、心強い後ろ盾に。

酒蔵で、職人さんらに遊んでもらった しあわせ感が原点。

丹山酒造有限会社  長谷川渚さん(37)五代目社長

 

 


 

130余年の歴史がある酒蔵の末娘として育ち、酒造りの道へ。19歳で杜氏見習いとして家業を継ぐ。現在は、五代目社長として、また丹山酒造の顔として日本全国に京の地酒の美味しさを伝える。

 

母はアイデアマン。その仕事っぷりがお手本です。

水のきれいな京都・嵐山上流。のどかな田園風景が広がる亀岡の地に、長谷川渚さんは3人兄弟の末娘として生まれました。酒造りは毎年11月~3月、季節になれば出稼ぎで15名前後の職人さんが酒蔵に寝泊りするのが通例。長谷川さんは幼少期、職人さんたちに可愛がられ、酒蔵を遊び場に育ちました。「私にとって蔵は楽しい場所。兄や姉とかくれんぼをしたり、職人さんに遊んでもらったり。母の忙しさを間近で見ていましたから、お手伝いは当り前でした」。末娘が家業を継ぐのは大きな決断だろうと思いきや、長谷川さんは「他に興味がなくて(笑)。高校卒業後はすぐに職人になりたかった」。長谷川さんがこの道に入った当初、女性杜氏は珍しく、全国でも数えるほど。蔵内では男女の性差なく修行を積んできたにも関わらず、メディアでも度々とりあげられた美人杜氏・長谷川さんに対して、外部から「女に酒造りができるわけない」と揶揄されたことも。悔しさを母に打ち明けると「言われている間がええんやで。うちの蔵が注目されているということや。言われんようになったら終わり」と、きっぱり。それ以来、周りの雑音は耳に入らなくなり、酒造りに没頭していきました。

丹山酒造の店頭には、京の地酒に並んで、ワインかシャンパンかのようなお洒落なボトルが目に付きます。これは?ぼんき「飯櫃という、女性やアルコールの苦手な方も楽しめる甘めのお酒です。うちは小規模経営ですから、ほとんどの商品は母との雑談から生まれます」。会議なし、企画書なし、マーケティング資料もいらない。ただ、誰よりもお酒を買うお客さんの顔を見ています。日々の作業や、お酒の勉強会に出席する中で、思いついたイメージを二人三脚で形にしてきました。「母の方がアイデアマンですね。やってみよう!というのも母。私は優柔不断なところがあり、背中を押されることも多いです」。とはいうものの、お酒にかけるバイタリティは溢れんばかり。五代目社長として新しいプロジェクトにも乗り出しています。「昨年、農業法人の資格をとり、会社として有機米づくりを始めました。春夏は米作り、秋冬は酒造り。昔は当り前だったこのサイクルを取り戻し、いずれは100%自分たちで作った有機米でお酒を造るのが目標です」。長谷川さんは7年前に結婚しましたが、その条件がなんとも彼女らしい。「仕事は辞めない」「家業は継ぐ」「忙しいときは仕事優先にする」。ありのままの姿を温かく見守ってくれる人との出会いは、女性の翼を大きく広げるもの。「私が思いつかなかった角度からアイデアをもらえるのも新鮮です」。

 


 

<長谷川さんの「ありのままの力」の鍵>

小さな頃から大人たちの働く姿を間近に見て育った長谷川さん。ごく自然に酒蔵を楽しい場所として認識できたのは、お母さまをはじめ働く職人さんたちの作りだす楽しげなムードがあったから。五代目社長となり責任が大きくなった今も、素直に心を開くことのできるファミリーの力が、ひたむきな長谷川さんの酒造り支えているようです。

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