Woman Smile Report 女性たちの暮らしと意識をレポートします

「ウーマノベーション」日本を変える、5つの女子力。 04

「巻きこむ力」が日本を変える。

2014/12/28

 


 

オンリーワン世代のフラットな空気から生まれた
「巻きこむ」チームづくり=

女性が得意な共感型コミュニケーション力がプロジェクトを成功へ。

 

ひとクセ、ふたクセある個性豊かなメンバーが、それぞれの才覚を発揮しながら力を合わせて課題解決に挑み、時に奇跡を起こす…。近ごろ話題の医療ドラマや刑事ドラマさながら、私たちの社会でいま注目されているのは「チームで働く」ということ。画一化した価値観や、縦割り組織の上下関係でものごとを進めるのではなく、フラットな人間関係でお互いの強みを活かしあう「プロジェクト型」のワークスタイルが増えています。そんな中で必要になるのは、自分の思いを伝えると同時に、メンバーの意見にも耳を傾けながら、みんなでよりよいソリューションを生み出そうとする力。強制ではなく、対話を重ねて生まれる共感や支持を背景に、周囲を味方につけて巻きこんでいくのは、女性の得意とするところです。この章では、そんな「巻きこむ力」を生かし、変革をもたらす「台風の目」になっている魅力的な女性たちと、それを後押しする企業のあり方に迫ります。

 


 

「社会をよくしよう」という当事者意識でチーム力を高める。

株式会社STRIDE(サイバーエージェント子会社)石田裕子さん(33)代表取締役社長

 

 


 

「女性が女性らしさを捨てることなく、才能を活かして働ける環境に」。藤田晋社長が創業時から思い描いたビジョンが浸透しているサイバーエージェント。男女問わず、誰もがライフステージの変化の中で主体性を持って仕事に向き合える、その企業文化の秘密とは。

 

「いい人」を呼び寄せる求心力は相手を思いやり相手を活かすことから。

 

「女性の働き方の選択肢を、クラウドソーシングで広げたい」。そんな思いからサイバーエージェントが2014年9月に立ち上げたのが、新子会社「株式会社STRIDE」。仕事を委託したい企業と、女性ワーカーをネット上でマッチングする「ウーマン&クラウド」を運営しています。約20名のチームを率いるのは、4歳児と0歳児のママである石田裕子さん。広告営業部のルーキー時代から数々の記録を打ち立て、入社3年目にして早くもマネジメント層に抜擢された女性です。「クラウドソーシングはあくまで仕組みであって、私たちが追求したい本質は、“女性がやりがいを持って活躍できる環境づくり”にいかに貢献するかということです。ここでは、そんな社会的意義をメンバーそれぞれが感じながら、既成概念を取っ払って、日々熱い意見やアイデアを交わしていて…。みんなびっくりするぐらい“いい人”なんです(笑)」。「指示を与えるより自分で考えるよう促す」のが、石田流。当事者意識を持ってもらうことが「巻きこむ力」の入り口といえそうです。「だからあまりマネジメントの苦労ってないんです」と石田さんはさらり。追うべきは目先の数字や昇進でなく、メンバーそれぞれの人生をいかに社会にとって価値あるものにするか。「理想から逆算して今の課題を見つけて」と話してマインドシフトを図っているとか。仕事の合間を縫ってメンバーひとりひとりとじっくり話せる時間も大切にしています。「相手の状況や求めていることを読み取るのは、女性の得意とするところ。そこはチームで働く上で活きているかもしれませんね」。保育園のお迎えのために18時に退社する石田さんを始め、育児中のパパが早めに退社することもあるなど、勤務体制はフレキシブル。そんな中でも計画通り物事が進んでパフォーマンスを発揮できるよう、チームでカバーし合っています。

 


 

「ママになっても長く働いてほしい」。会社の「本気度」が見える福利厚生。

 

サイバーエージェントでは技術職を除けば社員の男女比は半々。そんな同社がさらなる女性活躍推進をめざして、2014年に新たに導入したのが「マカロン」と銘打った福利厚生制度です。ma(ママになっても)、ca(サイバーエージェントで)、lon(長く)、働いてほしいという願いがその名に込められています。たとえば有給休暇にプラスして取得できる「エフ休(Female休暇)」は、生理休暇や婦人科治療、妊娠中検診など女性特有のニーズを包括したもの。特筆すべきは、その「エフ休」のうち「妊活休暇」も有給で月1回認められているところ。会社には「エフ休」とだけ申請を出せばよく、周囲に利用目的を知られることもありません。そのほか一人でもパートナー同伴でもカウンセリングを受けられる「妊活コンシェル」や、子供の急な病気時に役立つ「キッズ在宅勤務」、子供の学校行事や誕生日などの半休を認める「キッズデイ休暇」など、その内容は充実。これまでは主に女性が直面せざるを得なかったライフステージの変化という問題に、男女で向き合っていこうという意識が高まったのも、このような社内制度がきっかけになっているようです。有能な人材が長く働ける環境を整えるトップの意志。それに応える女性たちの努力と、全社の理解。その三位一体の力がこれからの経済を牽引していくのでしょう。

 


 

<働く女子に贈る明日へのヒント>

周囲を見渡しても真面目で頑張り屋の女性が多いという石田さん。「その分、“結婚したら”とか“子供ができたら”とか、少し先の課題にまだぶつかっていないうちから、あれこれ考えすぎて、無意識のうちに自分に制限をかけている人も多いと感じます。でもそんなハードルを乗り越えている人はたくさんいるのだから、解決の糸口を探す余地はあるはず。あとは本音で話せて、叱ってくれるメンターを見つけることも大切だと思います」。

身近な範囲を超えて、呼びかけはグローバルに。

一般社団法人ジェスペール 宗祥子さん(62) 代表理事/松が丘助産院 院長
いわて助産師による復興支援「まんまる」 佐藤美代子さん(36)
 代表/助産師

 

 


 

「すごいですよ!」と周りの人が口をそろえる、ジェスペール代表・宗祥子さんの巻きこむ力。「何とかして被災地のお母さんを助けたい」というたった一つの真摯な思いが、世の中やお金を大きく動かし、被災地での妊産婦の支援ネットワークが広がりました。

 

継続するためには費用がかかる。必要なものは必要と意思表示を。

 

「この津波の被害のなかで、妊産婦さんたちの身体が冷えているに違いない…」。2011年3月11日に起きた東日本大震災の津波の映像をテレビで見て、東京で助産師として助産院を経営し、日々お産に向き合っている宗さんは、いてもたってもいられなくなったと言います。宗さんはすぐに動き、東京都の助産院すべてに直接電話やメールで被災妊産婦の受け入れ依頼をして「東京里帰りプロジェクト」を立ち上げました。「“お金は払いますから”と協力を求めたんです。でも、その時あてはなかったんですよ(笑)」。そう笑う宗さんには、強い考えがありました。「ボランティアだからお金なんていらないと言われることがよくあったんですけど、タダ働きだとすぐ限界がきて3か月くらいしか続かないんです。でも、お母さんたちへの支援は長期的に必要なので、支援する人が動くお金は重要。だから絶対にお金を集めて日当をお支払いして継続してもらいたかったんです」。そして寄付サイトを作った宗さん。「ある本に、“呼びかける時は自分の手の届く範囲だけではなく、できるだけグローバルに呼びかけるべき”ということが書いてあって。それを思い出して、全世界に発信して寄付を集めようと思いました」。そのおかげで、寄付金は世界各国から集まりました。また、日本財団にかけ合い、1億5000万円の援助金を受けました。さらに宗さんが加入していた「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP)」の寄付先に立候補し、数百万の援助も受けました。「SVPで“必要なことがあれば、お金をくださいとちゃんと言いなさい”と学んでいたんです。政府や行政が動くのを待つよりも、いろんな形でお金を集めて自分たちが動けばいいということを実際にしている人たちを目の当たりにしていたので、この時“お金が必要”と声を上げて自分で動けたんです」。すごいネットワークや人脈があるわけじゃないけど…と言う宗さんは「これが必要ということを周りに言っていると、自然に適材適所な人やものが、ありがたいことに集まってくるんですよ」と笑います。巻きこむ力と引き寄せる力は、何か共通するものがあるのかもしれません。

 


 

行動力がつながるきっかけに。女性のしなやかさを最大限に活かして。

 

「宗さんの行動力とバイタリティはすごいんですよ」と話すのは、いわて助産師による復興支援「まんまる」代表の助産師で、ご自身も東日本大震災を経験された佐藤美代子さん。「私たちが困っている現状を聞きつけて、宗さんがすぐ東京から岩手へ来てくださって。すごくありがたかったんです」と当時を振り返ります。現地で佐藤さんから「他にも被災妊産婦の支援をしている助産師がいる」と聞いた宗さんは、さらに大船渡へ足を伸ばし、活動資金を援助。こうして資金援助を必要とする場所へ直接足を運び、各地の支援団体同士もつないでいきました。しかし、東京都助産師会からの援助は一年間の期限つきでした。「この期間で解決はしないので、『ジェスペール』という任意でサポートする団体を作ったんです。今はサイトを作って、いろんな被災地のサポートと広報をしています」。1都6県、約30か所に広がった支援の拠点は、今ではそれぞれで独立して動いたり、助成金をもらえるようになりました。「女性の力が一番発揮される“産む”ところをいつも見てサポートしているから、その人に寄り添って、しなやかに対応できるのかもしれません。助産師は各々の必要なことを見てその人に合ったケアをしていかないといけないですから」。被災地のお母さんを助ける小さなことが台風の目となり、人や力を巻きこみながら、未来を大きく変える原動力になるのかもしれません。

 


<働く女子に贈る明日へのヒント>

「幸せなお産ができたら丈夫な子ができて、お母さんも働けるようになるんですよ」と、宗さんと佐藤さんは口をそろえます。「産後からちゃんとくっついておっぱいをあげたら、抵抗力ができて強い子になる。未熟で産まれたりおっぱいがあげられない状況だとひ弱な子になって、お母さんは働けない。これからの社会、丈夫な子を産み、育てるというのが、女性が働き続けられる要になると思います」。女性が社会で活躍する鍵は、出産にもあるようです。

 

人を巻きこむのもいいけど、人に巻きこまれてみるのも新しい発見に。

studio-L 曽根田香さん(31)コミュニティデザイナー

 

 


 

コミュニティの性格にあわせて、言葉や情報、ファッションなども使い分けます。

 

曽根田さんが担当したプロジェクト「北加賀屋みんなのうえん」(大阪)。地域で創業して100年以上の「千島土地株式会社」と北加賀屋を拠点に活動する「NPO法人Co.to.hana(コトハナ)」とともに、畑づくりを通して人と人が出会いつながる仕組みづくりを目指してきました。開園にあたっては、農業のプロといっしょに農園用の空き地探しから始めました。農園には地域のデザイナーと一緒につくった看板やオリジナル農具も。カタチから入ることも大事。一般的な市民農園とは違い、初対面の人たち同士がチームになり、一つの区画を世話していく仕組みのため、「自分だけの収穫にならないのは楽しくない」という意見が寄せられたことも。「そんなことをして何になる?と地域の人に言われることもあります。地域のつながりを育むプロジェクトは、成果が目に見えにくいものです。ただし、新しく出逢う人によって視点が変わる。何かをきっかけに人が変わる。新しい展開が生まれる。それがこの仕事の醍醐味です」。みんなのうえんの場合も、地域の方々のところに何度も足を運び、コミュニケーションをとりながら丁寧に進めていきました。「町への入り方はさまざま。若い女性が多く集まる場所なら自分のファッションも感度の高いものにし、海外のムーブメントなどを織り交ぜて話をします。お年寄りが多い場合には服装もメイクも親しみやすく、カタカナ語を使わず、身近な事例をたくさん話すように心がけますね」。実は、人見知りの曽根田さん。声高に人を巻きこむタイプではない。志高く、腰低く。華やかなゴールは見えなくても「目の前にある仕事をひとつずつ丁寧にやることは間違いではない、と、島で出会った漁師の女将さんに教わりました」と話してくれました。

 


 

<曽根田さんの「巻きこむ力」の鍵>

巻きこまれる力の強い人が増えているという曽根田さん。観光ツアーやテーマパークなど受動的な楽しみではなく、能動的に楽しみを探し出す人たちと共に「こっちから見るとオモシロいよ!」など新しい視点を見つけるのが彼女の仕事。島や田舎町で出会う“おばちゃんたち”も楽しみを見つける天才だとか。新しいものを受け入れ、面白がる力=「巻きこまれる力」は古今東西、女性の得意分野かもしれません。

自分が広げるのではなく、みんなが楽しんで広げたくなることを考える。

株式会社電通 えぐちりかさん(35)アートディレクター

 

 


 

仕事と同じくらい、暮らしが好き。経験のすべてが仕事につながる。

 

「その人のことは知らなかったけど、その人が作った広告は見たことがありました」。アートディレクターという人と初めて出会った時にそう思ったという、えぐちりかさん。ここから自身もアートディレクターを目指しました。TBS6チェン!、ドコモダケアート展、ラフォーレ広告etc…。数多くあるえぐちさんの作品は、あの日思った「その人が作った広告は見たことがある」ものばかり。「一人の力は限界もあるけどアートディレクターだといろんな人と作れる。だから自分が広げるんじゃなくて、みんなが広げやすいことを考えようと思って」。『TBS6チェン!』のキャンペーンでは、分かりやすくキャッチーで広げやすいこと、どんな人も関わりやすいことを意識し、頭が6になったビジュアルを思いつきました。これを提案する時「番組に出てくる人みんながやったらさらにおもしろいですよねと、ちらっと言うだけなんです」とえぐちさん。するとテレビ局の人は“それならできる!”と、おもしろがって動いてくれる。「予算がなくてもこれのためになら頑張ってみようかな、関わってみたいなと思わせる企画を考えるのが私の仕事です」。

 

えぐちさんの、グイッと引き込まれる作品たちは、多くのクライアントから引く手あまた。多忙を極めるなか、プライベートでは二児の母。「時間が足りなくて…」。仕事との両立ではなく子育ては大変と、本音を語ります。「出産しても仕事の依頼をいただいて、満足してもらえるものを作らないとというプレッシャーと、子供とずっと一緒にいたいという気持ちの葛藤が常にありました。今でも何が正解か分からなくて、あの時のことを考えると泣きそうになるけど、本当に必死。やり方の方程式は全然ないんです」。子供の幸せそうな寝顔を見ると安心して仕事もできるし、元気に育ってくれていてよかったと思う、母としての思い。「そういう環境をトライアンドエラーで作る毎日です」。この状況を理解してくれるのは、愛する家族。
「私のやりたいことや生き方に、仕事も家族も巻きこまれているかもしれません(笑)。でも、みんなが、応援してくれるから、一層頑張れるんです」。この苦悩の中での両立は、思わぬ効果も呼びました。「仕事をしていたら、作っているものを子供も楽しみに待っていてくれるんです。家族にとってもいいことなのかなと思うようになりました」。子供の玩具の仕事が舞い込んだ時には、子育てにきっと役に立つからと頑張りました。「仕事をしながら学びがあれば、生活や家族に活かせる。逆に仕事の中に生活での経験やアイデアも活かせています」。謙虚で愛情にあふれるえぐちさん。そんな人柄に引き寄せられ、多くの人が喜んで巻きこまれているのかもしれません。

 


 

<えぐちさんの「巻きこむ力」の鍵>

「広げやすいアイデアにして、みんなが心から楽しい、やりたいと思って頑張れるフォーマットにすることを常に考えています」というえぐちさん。「私はきっかけを作るだけ。そこからみんなの力が合わさって、ひとつの大きなものになっているんです」。意図せずみんなは楽しんで、えぐちさんの企画に巻きこまれていくようです。

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